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歯周病のレッドコンプレックス

  近頃は口腔内細菌の研究が流行りのようです。
 以前はそれこそ微生物の研究者でもない限り、口腔内細菌は「虫歯のミュータンス菌」と「歯周病の歯周病菌」ぐらいの区分で済ませていましたが、研究が進んできて歯周病菌にも、通常はおとなしいもの、大暴れするだけのもの、他の菌も誘って暴れるもの、隙あらば全身へ行こうと機会をうかがっているものと、悪さの程度にも大きな差があることがわかってきました。
そこで「歯周病のレッド・コンプレックス」や「キーストーン病原体」といった概念が提唱されるようになってきました。
 書くべきことは数多ありますが、まずは「レッド・コンプレックス」こと歯周病の原因御三家の三つの菌、タンネレラ・フォーサイシア、トレポネーマ・デンティコーラ、ポルフィロモナス・ジンジバリスについて書いていきましょう。

 これらの菌は人間の消化酵素トリプシンによく似た酵素(トリプシン様酵素)を分泌する能力を持つのが共通の特徴です。
 人間は食べ物に対して腸でトリプシンという酵素をふりかけ、吸収しやすいようにバラバラに分解しています。これらの菌も同様の目的、つまり人間の組織を食べるためにこのトリプシン様酵素を分泌するわけですが、こんな消化酵素じみたものをいきなりぶつけられた歯周組織やその細胞はひとたまりもありません。しかも、菌はこの酵素を護身用に使ったりもしており、なかなか一筋縄ではいかない性質を持っているのです。

 まずタンネレラ・フォーサイシア
 顕微鏡での見た目はなにやらひょろ長い棒切れのような趣で、空気に触れるとたちまちダメになる(フォーサイシア菌に限らず歯周病菌というのはたいがいが嫌気性、つまり酸素をたいへん嫌っているのですが)弱々しい奴です。しかも環境や栄養に敏感で、フゾバクテリウム・ヌクレアタム菌という大きな棒切れみたいな菌と一緒でないと育たないなど、わりと気弱で繊細な性格の持ち主のように思われます。
 ところがこの弱々しい菌、口の中に入るとふてぶてしくもトリプシン様酵素の他にもPrtH、S-layer、BspA、ヘマグルチニン、アポトーシス・インデューシングアクティビティなどなど、なにやら胡乱な名前の物質を持ち出して盛んに歯周病を引き起こします。
 とくにPrtHはトリプシン様酵素でより簡単に人間の組織を消化しやすくするため、人間の細胞同士のつなぎ目をバラバラにできるのです。
 フォーサイシア菌はこうやって食事をとっていますが、組織を消化していると炎症により血が出てきます。これもなかなかのご馳走らしくPrtHで赤血球を壊し、零れ出た栄養を吸収してしまいます。

 次にトレポネーマ・デンティコーラです。顕微鏡でもの見た目は螺旋状で、なんとなくマカロニのフジッリに見えないこともありません。フジッリと異なって美味しそうではないですが。なかなか気骨のある奴で、他の菌は流れに身を任せて漂揺としていますが、デンティコーラ菌は右へ左へとたいへん忙しそうに動き回っています。
 このデンティコーラ菌はいろいろなものと良く引っ付く性質があり、他の細菌に引っ付き便乗して悪さをしたり、歯周組織へ引っ付いて腰を落ち着けてから食事をしたりします。
 そんなデンティコーラ菌の用意している武器はMspやデンティリジンです。
 Mspはデンティコーラ菌がいろいろなものに腰を落ち着けるときに使うタンパク質ですが、歯周組織を破壊する作用をも持ちます。
 もう一方のデンティリジンは例のトリプシン様酵素ですが、この酵素は消化以外にも、炎症を引き起こして血などが出やすいように細工しつつ、免疫は菌自身のところへ来ないようにするというたいへん器用な芸当を行います。
 通常、組織を痛めつけると白血球がサイトカインと呼ばれる物質を分泌して炎症を起こします。サイトカインとは白血球による「敵が侵入したぞ」という警報で、サイトカインによって白血球が集まって来たり、血管にある白血球や栄養の出入り口が広がって白血球が血管外へと出動しやすくなったりします。
 デンティコーラ菌は血管の出入り口から滲み出てくる栄養が好物なので、わざわざサイトカインが出るようにデンティリジンで白血球を刺激します。しかし、自分が白血球に食べられては困りますから、自身の周りのサイトカインはデンティリジンで念入りに分解して白血球の監視の目をくぐり抜けてしまいます。
 このように免疫の目をくぐり抜けることを覚えているデンティコーラ菌はさらに食事しやすいところを求めて、心臓冠動脈や大動脈の動脈硬化部位に住み着くことがあります。ただ住んでいるだけなら許さないでもないですが、ここでも相変わらずデンティリジンを放出して炎症を引き起こしているようで、動脈硬化を悪化させるとの研究結果もあります。住み着いている確率は歯周病の具合によって異なりますが、歯周病がほとんどない人でも10%、歯周病の重い人では30%近くの人で検出されたというデータもあります。

 最後にポルフィロモナス・ジンジバリスです。
 顕微鏡での見た目は丸っこくかわいらしい奴ですが、血液寒天培地の上に乗せてやるとたちまちその凶悪な本性を露わにし、いかにも毒々しい真っ黒な見た目の塊を作ります。
 このとき何をしているかと申しますと、赤血球を血球凝集素で捕まえ、ジンジパインというトリプシン様酵素で赤血球を溶かしてその中身を啜っています。この菌はヘモグロビンと結合すると黒くなるタンパク質を体表に持っていますので、啜れば啜るほど黒くなるというわけですね。
 さて、このジンジパインは恒例の細胞や組織を消化するという役割の他に、硫化水素(口臭の原因でもあります)を作って周りの細胞を殺す、免疫グロブリンや補体といった免疫物質を真っ二つにしたりサイトカイン産生を阻害して免疫を抑制するなどの役割を持っています。
 とくに免疫系を抑制するのが問題で、ジンジパインのおかげで周囲の菌も人間の免疫を恐れる必要がなくなるため凶暴化するというおまけがついてきます。このためジンジバリス菌は歯周病のキーストーン病原体(少数で無害菌を病原菌に転換することができる菌のこと)とも呼ばれます。
 ジンジバリス菌はこのうえ、このジンジパインやその他毒素を中に満載した膜小胞というものを作り人間の細胞に注入したり、莢膜という白血球対策の隠れ蓑や人間の組織中に潜り込んで白血球をやり過ごすという特技まで持っていたりもします。
 ジンジバリス菌は白血球からうまく隠れつつ細胞に毒素を注入して消化するというおそろしい破壊工作員ですが、やはり先ほどのデンティコーラ菌と同様によく動脈硬化部位から見出されます。
 ごく最近になってジンジバリス菌のもつLPSとよばれる物質や酵素がリウマチやアルツハイマー病を引き起こす原因なのではないかとも疑われています。まだそれのメカニズムは研究途上で、もしかすると偶然の一致なのかもしれないという段階のようですが、もしもジンジバリス菌が原因であるならば、歯磨きでリウマチやアルツハイマー病になる確率を下げられるかもしれません。


参考文献
『歯周病原性菌プロテアーゼと歯周炎』
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/50/1/50_1_3/_pdf
『歯周病とジンジパイン』
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/122/1/122_1_37/_pdf/-char/ja
『キーストーン病原体』(natureダイジェスト2014年12月)
    https://www.nature.com/ndigest/journal/v11/n12/pdf/ndigest.2014.141206a.pdf
『口腔微生物学・免疫学 第4版』
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