軽度の睡眠時無呼吸症候群にはマウスピース治療が保険適応になります。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)とは気道(呼吸時の空気の通り道)がなんらかの原因で睡眠中に塞がってしまうことで呼吸困難になり、睡眠の質が落ちてしまう病気です。
いびきを指摘される、日中強烈な眠気に襲われる、夜中に何度も目が覚めるといった症状が典型的ですが、患者さんご自身は気づいていないことも多くあり、指摘があっても「いびきが酷いぐらいで病院に行くのは......」と見過ごされがちです。しかしながら、眠気から交通事故や労働災害につながることがあり、新幹線の居眠り運転や高速バスの衝突といった重大事故から時折社会的に大きな注目を集める病気です。
単なる眠気の原因のみならず、高血圧の原因としても睡眠時無呼吸症候群は重要な病気であり、とくに二次性高血圧(原因がわかる高血圧)、治療抵抗性高血圧(降圧剤の内服や生活習慣の改善が効きづらい高血圧)の原因として最も頻度が高い病気でもあります。
他にも、夜間の交感神経活動亢進から心臓疾患や動脈硬化、腎不全、糖尿病、メタボリックシンドロームなどのリスクが上がると報告されています。
さて、睡眠時無呼吸症候群の治療法には持続陽圧呼吸療法(CPAP)と、歯科で作成するマウスピース(Oral Appliance : OA)療法があります。
CPAP療法では鼻に酸素マスクを装着し患者さんの呼吸に合わせて強制的に空気を送り込み、気道を確保します。重症の睡眠時無呼吸症候群にも適応でき、最も確実な方法です。しかし、鼻にマスクを装着して眠らないといけないため、違和感で寝付けない方や、CPAPの機械の騒音で眠れないという方もおられます。
歯科で作成するマウスピースによる睡眠時無呼吸の治療は、夜間に特殊なマウスピースを装着し下顎を少し持ち上げることで気道を確保します。睡眠時無呼吸症候群の多くでは舌が喉の奥へと落ち込むことで気道が塞がってしまっているのですが、顎をマウスピースで持ち上げると舌もそれに伴って持ち上がりますので、気道を確保できるようになるのです。 欠点としては重症の睡眠時無呼吸症候群には無効、マウスピースによる違和感、顎を持ち上げることによる顎関節症リスク増大などが挙げられます。
このページの下部に詳細な睡眠時無呼吸症候群の症状や合併症をあげておりますが、より詳細な情報を希望される方は一度当院にご相談いただけますと幸いです。 当院での睡眠時無呼吸症候群治療の流れは以下の通りです。
1回目
睡眠時無呼吸症候群の診断と検査結果がついた紹介状が必要です(保険のマウスピース作成時に必要となります)。紹介状をどこで貰ったら良いかわからない方は、当院から睡眠時無呼吸症候群の診断、検査を行っている専門医療機関への紹介も可能ですのでご相談ください。
当院では歯や歯茎、顎関節の状態を検査しマウスピース作成の可否について診断します。大きな虫歯や歯周病があるとマウスピースの装着が困難となるため、事前に治療をしっかり行う必要があります。問題がなければマウスピース作成用の型取りを行います。
2回目
作成したマウスピースを患者さんに合わせて細かく調整してから装着します。しばらく使っていただき、3回目以降の診察で患者さんの希望に合わせてマウスピースの調整や破損時の修理を行なっていきます。
睡眠時無呼吸症候群の症状 大きないびき 日中の強烈な眠気や注意散漫 睡眠中の呼吸停止 起床時の口の渇きや喉の痛み 起床時の頭痛 抑鬱状態
睡眠時無呼吸症候群のリスク因子 顎や首が太い、短い 肥満 高齢 喫煙 鼻詰まり 喘息